User Report 012

2024.01.10

トップアスリートの治療最前線【LIPUS活用編】

いしおか整骨院

痛みの根本的な原因改善を目的に、アスリートや一般の方の治療を行っている埼玉県毛呂山町のいしおか整骨院。石岡院長は実業団のアイスホッケー選手として活躍され、引退後に医療の道を志し、整骨院を開業。選手時代の経験を活かして多くのアスリートの治療を行っています。今回はメディカルコンディショニングコーチとしてサポートしている法政大学アイスホッケー部でのLIPUS(低出力パルス超音波)を用いた治療についてお話を伺いました。

はじめに石岡先生の競技歴と現職をめざした経緯について、お聞かせいただけますか?

北海道の釧路市出身で、別名・氷都と呼ばれるスケート競技が盛んな地域です。中でもアイスホッケーは苫小牧と並ぶ強豪で、私も小学校2年生から始めました。冬には校庭にアイスリンクができる環境でした。高校卒業後に実業団チームの西武鉄道に入団して、6年プレーしましたが、選手時代の私は、頭からつま先まで怪我したと言っても過言ではないくらい多くの怪我をしました。この経験を治療する側になればプラスに変えられると思い、治療家の道をめざすことにしました。

超音波骨折治療器と出会ったきっかけをお聞かせください。

選手時代から治療器にはお世話になっていて、その存在と効果は知っていました。その後も選手に何かあった時には必要だという認識でした。これまでは超音波骨折治療器を使う機会がなかったのですが、昨秋に法政大学アイスホッケー部で2人の選手が怪我をしてしまい、その時に超音波骨折治療器を使ったのがきっかけです。

怪我の内容について、お話しいただけますか?

一人目は今年プロ入りした安藤選手で、昨年9月末に右手根骨脱臼骨折をしました。12月のインカレ(全日本学生選手権)を控えており、何とかしてあげたいと思いましたが厳しい状況でした。そんな中で最善策を探ったところ、骨癒合を促進するLIPUSを使う決断に至りました。手首を固定した状態でプレーできれば間に合うかもしれないので、この治療に懸けてみました。

通常であれば、競技復帰までどのくらいの期間が必要なのですか?

チームドクターの診断では、最低でも4ヵ月。私も整形外科に勤めた経験がありますが、CT画像を見て相当な時間が必要だと感じました。

チームドクターとは、どのような協力体制を築いているのですか?

選手が怪我をした時に、まず私たちが状態を判断します。その場で対応できるもの、レントゲンやMRIなどで確認したほうがいいもの、完全に治療が必要なものがあります。治療が必要な場合は、まずドクターに任せてその後のリハビリを私たちが担当します。いわゆる医接連携が構築できています。

安藤選手の怪我に対して、超音波骨折治療器をどのように使用されましたか?

通常は骨癒合が進んで安定した状態になってから治療をしますが、それでは大会に間に合わないため、手術前にドクターと話し合い、LIPUSを同時進行でやることにしました。幸いにもシーネで固定することになり、1日20分ほどLIPUSを照射しながら患部周辺のリハビリも同時に行えました。骨癒合と筋肉の活性化を両立できたのは良かったと思います。

[手術前のCT画像]
手根骨に転位が見られる
[手術後(10/4)のレントゲン画像]
金属での内固定を実施

2ヵ月で競技復帰できたと伺いましたが、超音波骨折治療器の効果についてお聞かせください。

昨年9月末に受傷して、10月初旬に手術。その2週間後にLIPUSの照射を開始。それから約1ヵ月が過ぎた頃に競技復帰して、12月下旬のインカレに出場できるまで回復しました。負荷をかけた時の痛みの有無が復帰の判断基準で、最初は指に力も入らない状態でした。週2回ほど、私とトレーナーが交代でリハビリを担当し、選手本人にも機器の使い方を指導しました。しばらくすると指が開けるようになり握力も強くなってきたので、あまりの回復ぶりに驚きました。多くの骨折治療に携わってきましたが、従来の常識ではあり得ない早さです。手の状況を動画に撮ってドクターに共有した際も、見る前は「まだ動かせる時期じゃない」と仰っていたのですが、その後に検査をしたら治っていて驚きを隠せない様子でした。競技復帰した時は、感慨深いものがありました。

それでは、もう一人の山村選手の怪我の治療についてお聞かせください。

昨年の10月初旬に右内側側副靭帯部分断裂・内側半月板損傷という大きな怪我を負いました。怪我の度合いは安藤選手より厳しく、当初は翌春の復帰をめざす予定でした。彼は骨格的に内側に負荷がかかりやすいタイプなので、怪我をした瞬間にマズいと思いました。怪我の10日後に手術を行い、その10日後から1日20分のLIPUS照射を開始。同時に患部周辺に電気刺激を当てて筋肉を動かし、手技で少しずつ可動域を広げていきました。その結果、11月末に練習を再開することができました。

複数の治療法を組み合わせたようですが、電気刺激など他の物理療法エネルギーと組み合わせることで得られるメリットについて教えてください。

LIPUSは、怪我で損傷した部位を局所的に治療できるのが利点です。そのおかげで周辺の筋肉などは、別の物理療法機器や手技でアプローチすることができます。

山村選手の復帰までの過程についてお聞かせください。

ドクターの診断では、軽いランニングを始められるまでに約3ヵ月、競技復帰まで約半年かかるということでした。しかし、毎日確認する中で徐々に可動域が出てきたので自重でエクササイズを行ってみましたが、痛みがないと言うので次に負荷のかかる動作をさせました。それでも痛みがないようなので動画でドクターに確認したところ、一度MRIで検査することになりました。画像を見ると驚くことに治っていたので、そこからは競技に向けたトレーニングをしていきました。

二人とも驚きの早さで回復し、インカレ出場に間に合ったのですね。

奇跡のような出来事ですが、二人も立て続けに回復したのは今回の大きな成果です。LIPUSを使った治療で、これから多くのアスリートの早期復帰を手助けできるのではないかと思っています。

最後に、スポーツに携わる治療家の方へLIPUSをおすすめできる点を教えてください。

骨癒合の促進はもちろん、損傷した部位の修復にも効果があることが確認できました。これは実際に起きたことなので、自信を持ってお伝えできます。LIPUSで治療の幅も大きく広がると思うので、ぜひ多くの方に使ってもらいたいですね。

PROFILE

石岡 知治 院長

高校卒業後、アイスホッケーの実業団選手として上京。選手時代の怪我の経験から引退後、治療家の道を目指す。帝京医学技術専門学校柔道整復学科卒業後、埼玉県狭山市ふくだ整形外科(現入曽整形外科)の物理療法科主任、副院長を歴任後、1997年に埼玉県入間郡毛呂山町にスポーツ障害・妊婦腰痛研究所 いしおか整骨院を開業。現在、整骨院の他に脳萎縮予防筋トレをテーマとしたボディコンディショニングスタジオの運営や一般社団法人メディカルトレーニング協会の理事、中林助産師学院外部講師なども務める。

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