User Report 004

2023.04.13

デイサービスで物理療法を活用し、地域の健康をサポート

ひだまり リハ&トレ ステーション

2006年に埼玉県加須市で開設された、ひだまり接骨院。コロナ禍の往診時にリハビリ・トレーニング施設の必要性を感じ、2021年1月に歩行訓練に特化したデイサービス「ひだまり リハ&トレ ステーション」を開設。地域の高齢者からスポーツに取り組む学生・アスリートまで幅広い世代の方々の身体の悩みに応えています。

ひだまり リハ&トレ ステーションは、地域の新しい複合施設と謳われていますが、具体的にどのような施設なのでしょうか?

一言で言うと「病院のリハビリの延長線上にある施設」。病院のリハビリ施設が街中にあるようなイメージです。歩行訓練に特化したデイサービスを行っており、理学療法士や柔道整復師などの機能改善のプロが丁寧にサポートしています。一般的なデイサービスとは一味違い、レクリエーションがほとんど無く、運動中心のリハビリで、超音波エコーを使った診察も行っています。これは当施設ならではの特長ではないかと思います。また、デイサービスの時間外を利用して、野球やチアダンスをやっている子どもたちに怪我をしないためのトレーニング方法を教えたり、野球肘検診を行ったりしています。さらに障害予防セミナーを行うなど、さまざまな世代の方に対して怪我を未然に防ぐための啓蒙をしています。長年お世話になっている地域のみなさまが気軽に集まれるコミュニティーとしての役割も担いたくて、複合施設と呼ぶようにしました。

元々は接骨院を運営されていますが、なぜデイサービス事業にも取り組もうと思われたのですか?

コロナ禍になって、患者様を取り巻く環境が大きく変化したことがきっかけでした。接骨院に通院していただくことが困難になり、往診が格段に増えました。患者様のご自宅等でも痛みを取ることはできるのですが、歩行訓練や筋力トレーニングなどのリハビリはスペースも限られていてなかなかできないというのが現状でした。一方で、慢性的な痛みの治療に対して保険が適用されないこともあり、高齢者の接骨院離れも進んでいて、これもどうにかできないだろうかと考えていました。その結果、密を避けながらリハビリやトレーニングができる広い空間を有する施設をつくり、デイサービスという形態をとるという答えにたどり着きました。

どのような利用者様がお越しになるのですか?

病院を退院した後で歩行に不安を抱える方、日常的に下肢の筋力が低下している方、歩行困難で転倒の心配がある方がほとんどです。ひだまり接骨院で治療を受けていた方が、年齢を重ねてデイサービスにお越しになるというパターンも多いです。定員は午前・午後それぞれ25人。それに対してスタッフは理学療法士、柔道整復師が5人。そこに看護師、生活相談員、管理者が加わり、常時7〜8人体制で運営しています。

施設の開設にあたって苦労したこと、良かったことはありますか?

接骨院を運営しながらの開設だったので、人材の確保に苦労しました。今は多くなりましたけど、はじめはギリギリの人数でのスタートでした。同様の理由でスタッフの教育も課題でした。仕事をやりながら実践的に覚えてもらったり、終業後に勉強会を開いたりしながら少しずつ体制を整えていきました。
良かった点は、「団体でやるリハビリではなく、個々のリハビリメニューを組んでくれるのでやりがいを感じる」、「治したい意思を持った人が集まっているので、前向きな気持ちになれる」など、利用者様のためになっていることを実感できる反響をいただいていることです。

デイサービスでは、どのような物理療法機器をご使用になられていますか?

電気刺激装置、超短波治療器、超音波エコーを主に使用しています。デイサービスの利用者様は年配の方がほとんどで、変形を患っている方が多くいらしゃいますので、物理療法機器は痛みの抑制・緩和に役立てています。また、ご自宅で怪我をして翌日に診て欲しいという方に対して超音波エコーを使うなど、急な処置で活躍することも多くあります。超音波エコーは診察する際にも使っていて、痛みの原因を探ったり、筋肉の硬さを調べたりしています。筋肉が硬くなっている場合は、物理療法機器や徒手でケアしています。
利用者様は、電気刺激装置の「Hi-Voltageモード」や「MCRモード」による治療や、超音波エコーを使った診察など、ご自身が実感できるものには効果を感じやすいようで、とても喜ばれています。

他にはどのような機器を導入されていますか?

筋力トレーニングマシンや平行棒、足浴などがあります。7割の方が歩行訓練を目的に来ていますので、レッグエクステンションやレッグプレス、バイクなどを活用しています。肩関節の炎症や上肢の骨折後のリハビリにはケーブルエクササイズマシンを使っています。変わったところでは、デイサービスのサービス提供時間以外に地域の子どもたちの運動指導の為、ボルダリングウォールで野球やチアダンスのトレーニングをしています。

これから介護事業(デイサービス等)への参入を検討している接骨院の先生にアドバイスをお願いします。

私自身、元々はデイサービスに興味がなく、接骨院一本でやっていこうと思っていました。しかし、先ほどもお話したとおり、時代の流れで接骨院のみの運営では難しい状況になってきました。そこで私は経営面と地域のニーズを両面で考え、デイサービスへの参入を実行しました。接骨院ではなかなか診ることのできない高齢者の方でも、デイサービスであれば診られる場合もあります。お年寄りのために何ができるのかを常に考え、お役に立ちたいという気持ちがあれば地域の方々も利用してくださるはずです。それが、やがて新たな需要の掘り起こしにもつながり、経営面でも軌道に乗せていけるようになるのではないかと思います。

最後に、今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。

これまで20年近く、加須市で接骨院とリハ&トレ ステーションをやってきて、地域に恩返しをしたい気持ちを持っています。従来のデイサービスにないものを、接骨院を基盤に持つリハビリに特化した施設として、利用者様の立場に立ってつくっていきたいと考えています。例えば体幹を強化する設備であったり、超音波治療器などの痛みを緩和できる機器であったり、多くのお年寄りが悩んでいる自律神経を調整する機器なども導入できればと思っています。そうしたことが少しずつできるようになれば、日本全国探してもなかなかないユニークな施設になるのではないでしょうか。とにかく、地域のみなさまに喜んでもらえることを考えていきたいです。

PROFILE

黒須 真一 院長

1996年、顕正会 蓮田病院リハビリ科勤務、1998年埼玉県内の接骨院にて分院長として勤務。その後、河野臨床医学研究所付属第三北品川病院 コ・メディカル科で救急外来、整形外来、リハビリテーションに携わり、2006年に埼玉県加須市でひだまり接骨院を開院。2021年、ひだまり リハ&トレ ステーションを開設。柔道整復師、日本超音波軟骨組織学会に所属。NPO 日本食育アドバイザー、レディース・ピリオド セラピスト、Jaca 認定ひめトレインストラクター、キッズスペシャリストなど、幅広く活躍している。

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