要介護高齢者向けの機能訓練の尺度
株式会社ツクイ
株式会社ツクイは1983年から介護に関わるさまざまなサービスを発信・提供している企業です。デイサービス事業、住まい事業(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホーム)、在宅事業等さまざまな事業を展開しています。そして、デイサービスの事業所数は全国に500ヵ所以上、46,000名以上の利用者を支える、介護業界トップクラスの地位を確立しています。
機能訓練の動機づけ
デイサービスにおける介護サービスの一環として、理学療法士などの機能訓練指導員による機能訓練が行われています。機能訓練とは身体機能や生活機能の維持・向上を目的として行われるもので、ツクイでは心身機能面だけでなく、日常生活活動、社会参加や家庭内での役割なども評価しながら、個別機能訓練のプログラムを提供しています。
サービス管理部所属の波戸真之介さん※1 は、機能訓練の内容や全国の指導員のマネジメントを担当しています。波戸さんは大学で理学療法士の資格を取得し、大学院で地域や高齢者に関わる理学療法を専門に学びながら大学病院のリハビリテーション室で理学療法士として1年間働き、その後2011年に株式会社ツクイに就職しました。入社後は機能訓練指導員としてデイサービスの現場や西日本のデイサービスの機能訓練に関わる管理運営等を経験し、2017年4月からサービス管理部の所属として、会社全体の機能訓練に関するマネジメントの業務に従事しています。「デイサービスに通う方は原則要介護・要支援の方で、生活を送る中で何かしらの課題を抱えている、機能訓練が必要な方たちです。ITO-InBody370※2 は、その方たちが機能訓練を始める動機づけとして活用しています。」
- ※1 所属等は2019年8月時点での情報です。
- ※2 ITO-InBody370は、インボディ社がODM製品として伊藤超短波株式会社に提供している体成分分析装置です。
介護施設に適したITO-InBody370
ITO-InBody370が導入される前から、体力測定、FIMや認知機能検査などを用いて機能訓練に関わる評価をしていましたが、5年程前に機能訓練のために筋力トレーニングマシンの導入が進んだのと同時に、その機能訓練の変化や成果を見るための体成分分析装置の導入が検討されました。当初は横になった状態で測定できるタイプの他社製品も候補として挙がりましたが、手足に電極を付着する手間がかかり、現場で使用するには適さないという点でITO-InBody370の導入が進みました。
「介護現場では、評価にかけられる時間に限りがあります。また、現場としても、評価のための時間をつくるよりも機能訓練の介入に時間をかけたいという思いがあります。株式会社として、費用対効果に関しては他社製品とも比較してシビアに検討しましたが、測定の手間やフィードバックのしやすさ、コスト面などを総合的に考慮しInBodyを導入することになりました。」
InBodyの導入前はデモ機で、測定可能な対象者・測定対象人数・再現性・実際の活用についてなどを検証しました。ITO-InBody370は立位姿勢を45秒間維持するだけで測定が完了するため、介護の現場でも十分活用でき、運用費は結果用紙のみでランニングコストもかかりません。現在では、エリア内の複数事業所で1台のInBodyを共有使用することが多く、全国で計80台以上が稼働しています。
機能訓練の評価について
機能訓練の成果を評価するためにITO-InBody370による3ヶ月から6ヶ月間程度での定期的な測定が行われています。測定は機能訓練指導員や介護スタッフによって行われ、結果の説明・解釈は機能訓練指導員によって本人や家族に伝えられます。InBody測定は家族からの反響も良く、デイサービスで取り組んでいることに興味を持ってもらうきっかけになっています。また、デイサービスに通う要介護・要支援高齢者は通所サービスだけでなく、訪問介護など様々なサービスを使用しており、介護サービスを必要とする高齢者と介護サービス事業所を繋ぐ調整役のケアマネージャーにも結果は情報共有されます。
主に結果用紙の部位別筋肉量の下半身や左右差を評価しています。歩行量が少なく身体活動量が低下してくると、健常高齢者と比較して、部位別筋肉バランス項目の下半身筋肉量の少なさが目立ってきます。本人にも測定結果を見てもらい、身体活動量の向上を意識してもらうように結果を活用しています。
過去の骨折などによる怪我が原因で筋肉量に左右差が現れる方もいます。例えば、右大腿骨の骨折をしたことがある方は、右脚の筋肉量が左脚に比べて少なくなり、身体バランスチェック項目の下半身バランスにおいて「やや不均衡」チェックが入ってしまいます。この場合、筋肉量が少ない部位の右脚筋肉量を増やすための筋トレを機能訓練で行います。
他には体格指標も評価しています。要介護高齢者の中には体脂肪量を減らさないと日常生活動作が自立しづらい方もおり、その場合は運動だけでなく、栄養面にも考慮してもらう意識づけとして活用しています。
また、筋肉量のみ増やす機能訓練を実施しても、筋肉を使うための調整力がないと日常生活動作には繋がりません。そのため、筋力・歩行・バランスに関する体力測定を実施し、ツクイ独自のレーダーチャートで体力に対するフィードバックも行っています。
成果が見えるデイサービス
近年、デイサービスは高齢者が通って世話を受けるだけの場所という認識ではなく、提供されるサービスの品質や成果を求める人が増加しています。また、2018年4月にADL維持等加算という、ADLの維持・改善に繋がった利用者が多いデイサービスの報酬を引き上げる加算制度が創設され、国全体で介護分野のサービス向上を掲げています。
「ITO-InBody370が導入されたことにより、機能訓練による筋肉量増加の効果が見えやすくなり、指導員側にとっても指導しやすくなりました。また、InBody測定を提供可能サービスとして新規開設事業所のパンフレットに載せており、デイサービスのアピールポイントの1つになっています。国でもADL維持等加算のようなアウトカム評価を新設し始めており、デイサービスに対して何かしらの成果を求めるようになってきました。このような流れもあり、引き続き“成果が見える機能訓練”を提供する介護サービスを目指していきたいと考えています。」
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